所得控除について徹底解説
はじめに
所得税や住民税を計算する際、収入金額から一定の金額を差し引くことができる制度が「所得控除」です。所得控除を正しく理解し活用することで、納める税金を軽減することができます。
(2025年10月現在)。また、2025年12月からは新たに「特定親族特別控除」が施行されます。この記事では、2025年11月時点の最新情報に基づき、所得控除15種類について詳しく解説します。
所得控除とは
所得控除とは、所得金額から差し引かれ、課税対象となる所得金額を減らすことができる制度です。私たちは、勤務先や事業、有価証券の配当など、あらゆる手段を通じて収入を得ています。そして収入を得ると税金を納めますが、その際に適用されるのが所得控除です。
所得控除は、社会政策上の配慮や、納税者の個人的事情を考慮して、税負担を調整するために設けられています。受けられる所得控除が多いほど課税所得金額が下がり、税金が軽減されます。
所得控除と税額控除の違い
所得控除は、所得金額から差し引かれ、課税対象となる所得金額を減らす制度です。一方、税額控除は、課税所得金額に税率をかけて求めた所得税額から、一定の金額を直接控除するものです。税額から直接差し引くため、税額控除の方がより直接的に税金を軽減できます。
所得控除は15種類ある
所得控除は全部で15種類あり、「人的控除」と「物的控除」に大別されます。
納税者本人や配偶者、親族など、人に関する所得控除のことです。扶養親族の有無をはじめとした人・家族構成に関する事情を考慮して、税負担を調整するために設けられています。
納税者の支出に対する所得控除のことで、社会政策的な配慮から設けられています。医療費や社会保険料、寄附金など、特定の支出があった場合に適用されます。
所得控除15種類の一覧表
| 分類 | 控除の種類 | 主な適用条件 | 控除額 |
|---|---|---|---|
| 人的控除 | 基礎控除 | すべての人に適用 | 58万円(合計所得金額2,350万円以下の場合) 2025年12月~施行 |
| 配偶者控除 | 生計を一にする配偶者の合計所得金額が58万円以下(給与収入123万円以下) 納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下 |
38万円(納税者本人の合計所得金額900万円以下の場合) 老人控除対象配偶者: 48万円 |
|
| 配偶者特別控除 | 納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下 配偶者の合計所得金額が58万円超133万円以下 |
1万円~38万円(本人と配偶者の合計所得によって異なる) | |
| 扶養控除 | 生計を一にする、合計所得金額が48万円以下かつ16歳以上の親族がいる | 38万円~63万円(扶養親族の年齢や同居の有無によって異なる) | |
| 障害者控除 | 障害者本人または、障害のある生計を一にする配偶者、もしくは扶養親族がいる | 27万円・40万円・75万円のいずれか(障害の程度や同居の有無によって異なる) | |
| 寡婦控除 | 配偶者と離婚し再婚していない 扶養親族がいる ※死別の場合は扶養親族がいなくても良い 納税者本人の合計所得金額が500万円以下 |
27万円 | |
| ひとり親控除 | 納税者本人がひとり親である 生計を一にする子がいる 納税者本人の合計所得金額が500万円以下 子の総所得金額が58万円以下 |
35万円 | |
| 勤労学生控除 | 勤労学生である 納税者本人の合計所得金額が85万円以下かつ給与所得等以外が10万円以下 |
27万円 | |
| 物的控除 | 社会保険料控除 | 納税者本人や同一生計の親族の社会保険料を支払っている | その年に実際に支払った社会保険料の全額 |
| 生命保険料控除 | 生命保険、介護医療保険、個人年金保険の保険料を支払っている | 一定の計算式によって計算した額(上限12万円) | |
| 地震保険料控除 | 地震保険料を支払っている | 一定の計算式によって計算した額(上限5万円) | |
| 小規模企業共済等掛金控除 | 確定拠出年金や小規模企業共済の掛金を支払っている | その年に支払った掛金の全額 | |
| 医療費控除 | 1年間に支払った医療費が一定額を超えている | (実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額)-10万円 ※最高200万円 |
|
| 雑損控除 | 災害や盗難などで損失が生じている | 一定の計算式によって計算した額 | |
| 寄附金控除 | ふるさと納税など特定の寄附をしている | (寄附金額または総所得金額の40%相当額のいずれか低い金額)-2,000円 |
人的控除の詳細解説
1. 基礎控除
基礎控除は、すべての人に適用される所得控除です。控除できる金額は合計所得金額により変わります。
合計所得金額が2,350万円以下の場合: 58万円(10万円引き上げ)
現行では、納税者本人の合計所得金額が2,400万円以下であれば基礎控除額は48万円です。しかし、令和7年度税制改正により、2025年12月からは基礎控除額が改正されます。
2. 配偶者控除
配偶者控除は、納税者に条件を満たす控除対象配偶者がいる場合に受けられる所得控除です。
- 民法上の配偶者であること
- 納税者と生計を一にしていること
- 配偶者の年間の合計所得金額が58万円以下(給与収入123万円以下)
- 納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下
- 納税者本人の合計所得金額が900万円以下: 38万円
- 900万円超950万円以下: 26万円
- 950万円超1,000万円以下: 13万円
- 老人控除対象配偶者(70歳以上): 48万円~16万円
配偶者控除の対象となる配偶者の年収上限が103万円から123万円に引き上げられました。
3. 配偶者特別控除
配偶者特別控除は、控除対象配偶者の所得が配偶者控除の対象範囲を超えた場合でも、段階的に控除を受けられる制度です。
控除額
配偶者の年収が123万円超160万円以下の場合、配偶者特別控除の満額(38万円)を受けられます。160万円を超えると段階的に控除額が減少し、201.6万円以上で控除額は0円となります。
配偶者特別控除で満額(38万円)の控除を受けられる配偶者の年収上限が、従来の150万円から160万円に引き上げられました。
4. 扶養控除
扶養控除は、納税者本人に所得税法上の控除対象扶養親族がいる場合に受けられる所得控除です。
- 一般の控除対象扶養親族(16歳以上): 38万円
- 特定扶養親族(19歳以上23歳未満): 63万円
- 老人扶養親族(70歳以上): 48万円
- 老人扶養親族(70歳以上で同居): 58万円
5. 障害者控除
障害者控除は、納税者本人、同一生計配偶者、扶養親族のいずれかが所得税法上の障害者に当てはまる場合に受けられる所得控除です。
- 障害者: 27万円
- 特別障害者: 40万円
- 同居特別障害者: 75万円
6. 寡婦控除
寡婦控除は、配偶者と離婚または死別した後で婚姻をしていない場合に受けられる所得控除です。控除額は27万円です。ただし、死別の場合は扶養者がいなくても控除が受けられます。
7. ひとり親控除
ひとり親控除は、納税者本人がひとり親である場合に受けられる所得控除です。控除額は35万円です。ただし、子の総所得金額が58万円以下の場合です。
8. 勤労学生控除
勤労学生控除は、納税者自身が勤労学生である場合に受けられる所得控除です。控除額は27万円です。
物的控除の詳細解説
1. 社会保険料控除
社会保険料控除は、納税者本人や同一生計の親族の社会保険料を支払った場合に受けられる所得控除です。
- 健康保険料、国民健康保険料
- 後期高齢者医療保険料、介護保険料
- 国民年金保険料、厚生年金保険料
- 雇用保険料など
社会保険料控除は上限がないため、支払った金額の全額を控除できます。
2. 生命保険料控除
生命保険、介護医療保険、個人年金保険の保険料を支払った場合に受けられる所得控除です。一定の計算式によって計算した額(上限12万円)。
3. 地震保険料控除
地震保険料を支払った場合に受けられる所得控除です。一定の計算式によって計算した額(上限5万円)。
4. 小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済、確定拠出年金(iDeCo)などの掛金を支払った場合に受けられる所得控除です。その年に支払った掛金の全額を控除できます。
5. 医療費控除
1年間に支払った医療費が一定額を超えている場合に受けられる所得控除です。
計算式:実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額-(AまたはBのうちの低い方
A:10万円 B:総所得金額合計×5%
※最高200万円
※総所得金額が200万円未満の場合は総所得金額等の5%
6. 雑損控除
災害、盗難、横領等によって資産について損害を受けた場合に受けられる所得控除です。
7. 寄附金控除
ふるさと納税など特定の寄附をした場合に受けられる所得控除です。(寄附金額または総所得金額の40%相当額のいずれか低い金額)-2,000円。
2025年度税制改正のポイント
令和7年度税制改正では、所得税の「年収の壁」が見直され、所得税が課税されるようになる103万円の壁が、160万円の壁に引き上げられました。
基礎控除の引き上げ
改正前:48万円
改正後: 58万円
(合計所得金額2,350万円以下の場合)
給与所得控除の引き上げ
改正前: 55万円
改正後: 65万円
(最低保障額)
配偶者控除・配偶者特別控除の改正
配偶者控除
年収上限: 103万円 → 123万円配偶者特別控除
満額適用範囲: 150万円 → 160万円
2025年12月1日から新たに「特定親族特別控除」が施行されます。
まとめ
所得控除は全部で15種類あり「人的控除」と「物的控除」に大別されます。所得控除を正しく理解し活用することで、納める税金を軽減することができます。
人的控除(8種類)
- 基礎控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 障害者控除
- 寡婦控除
- ひとり親控除
- 勤労学生控除
物的控除(7種類)
- 社会保険料控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 医療費控除
- 雑損控除
- 寄附金控除
これらの改正により、より多くの人が税負担を軽減できるようになります。
自分が利用できる所得控除はないか確認し、年末調整や確定申告で適切な手続きを行いましょう。所得控除について不安がある場合は、税理士や税務署に相談することをお勧めします。