65歳以降に年金を受け取りながら働く

年金を受け取りながら働く場合の税金や控除額について解説します

日本では、65歳から老齢年金の受給が始まります。例えば10月10日生まれの方は、10月9日に受給権が発生します。しかし、65歳を過ぎても働き続ける方が増えている現代において、「年金をもらいながら働くと、実際にいくら手元に残るのか」という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

本記事では、65歳から年金を受け取りながら企業に勤めているAさんの例を用いて、給与・年金・社会保険料・税金を詳細に計算し、リアルな手取り額をお伝えします。

Aさんのプロフィール
項目 内容
年齢 65歳
居住地 東京23区
就労状況 会社員(社会保険加入)
月収 給与 20万円
年金 月額 10万円(老齢基礎年金 6.5万円、老齢厚生年金 3.5万円)

在職老齢年金制度とは

働きながら年金を受け取る場合、給与と年金の合計額によっては年金が減額される「在職老齢年金」制度があります。この制度は、一定以上の収入がある方の年金を調整することで、世代間の公平性を保つために設けられています。

2025年度の支給停止基準額

51万円

基本月額(老齢厚生年金の月額)と総報酬月額相当額(給与と賞与の月平均)の合計が51万円を超えると、超過分の2分の1に相当する年金が支給停止となります。

Aさんのケースでの計算

項目 金額
基本月額(老齢厚生年金部分) 3.5万円
総報酬月額相当額(給与) 20万円
合計 23.5万円
判定結果

Aさんの合計額23.5万円は、支給停止基準額51万円を下回っています。したがって、年金は満額支給されます。

基礎控除(2025年改正版)

所得税の計算において、すべての納税者に適用される控除です。2025年の税制改正により、控除額が大幅に増額されました。

合計所得金額 控除額
2,350万円以下 58万円
2,350万円超 2,400万円以下 48万円
2,400万円超 2,450万円以下 32万円
2,450万円超 2,500万円以下 16万円

基礎控除の特例(給与所得者向け)

合計所得金額655万円以下(給与収入でいうと850万円以下)の給与所得者については、基礎控除の金額に上乗せがあります。この特例は年末調整において適用されます。

合計所得金額 基礎控除額 上乗せ額
132万円以下 95万円 +37万円
132万円超 336万円以下 88万円 +30万円
336万円超 489万円以下 68万円 +10万円
489万円超 655万円以下 63万円 +5万円
注意:この特例は2025年および2026年のみの適用となります。

Aさんの合計所得金額は160万円なので、「132万円超 336万円以下」に該当し、基礎控除額は88万円です。

給与所得控除(2025年改正版)

給与所得者にとっての必要経費のようなもので、給与収入に応じて自動的に控除されます。2025年の税制改正により、最低保障額が増額されました。

給与等の収入金額 給与所得控除額
190万円以下 65万円(最低保障額)
190万円超 360万円以下 収入金額 × 30% + 8万円
360万円超 660万円以下 収入金額 × 20% + 44万円
660万円超 850万円以下 収入金額 × 10% + 110万円
850万円超 195万円(上限)

Aさんの給与所得控除額の計算

年収:240万円(20万円 × 12ヶ月)

給与所得控除額 = 240万円 × 30% + 8万円 = 80万円

給与所得 = 240万円 – 80万円 = 160万円

公的年金等控除

公的年金を受け取る方に適用される控除です。年金収入から一定額を控除することで、税負担を軽減します。

公的年金等の収入金額(65歳以上) 公的年金等控除額
110万円以下 110万円(最低保障額)
110万円超 330万円以下 収入金額 × 25% + 27.5万円
330万円超 410万円以下 収入金額 × 15% + 68.5万円
410万円超 770万円以下 収入金額 × 5% + 145.5万円
770万円超 195.5万円(上限)

Aさんの公的年金等控除額の計算

年金収入:120万円(10万円 × 12ヶ月)

公的年金等控除額 = 110万円(最低保障額)

公的年金等所得 = 120万円 – 110万円 = 10万円

所得金額調整控除

給与所得と年金所得の両方がある方に対する負担軽減措置です。2020年の税制改正で導入されました。

適用要件 給与所得控除後の給与等の金額と公的年金等に係る雑所得の金額の合計額が10万円を超える場合 所得金額調整控除額の計算式

所得金額調整控除額 = (給与所得控除後の給与等の金額 + 公的年金等に係る雑所得の金額) – 10万円 ※10万円超の場合は10万円

Aさんの所得金額調整控除額の計算

給与所得:160万円

公的年金等所得:10万円

合計:170万円

所得金額調整控除額 = 170万円 – 10万円 = 160万円

ただし、上限が10万円なので、10万円が控除されます。

社会保険料控除

1年間に支払った社会保険料の全額が所得から控除されます。

社会保険料の種類 控除の対象
健康保険料 全額控除
厚生年金保険料 全額控除
雇用保険料 全額控除
介護保険料 全額控除

給与から天引きされるもの

社会保険料(月額)

項目 計算式 金額
健康保険料 20万円 × 4.955% 9,910円
厚生年金保険料 20万円 × 9.15% 18,300円
雇用保険料 20万円 × 0.55% 1,100円
合計 29,310円
注意点:65歳以上の会社員は、給与から介護保険料は天引きされません。介護保険料は年金から天引きされます。

所得税・住民税(月額)

年間所得の計算

給与所得:160万円

公的年金等所得:10万円

所得金額調整控除:▲10万円

総所得金額 = 160万円 + 10万円 – 10万円 = 160万円

課税所得の計算

社会保険料控除:29,310円 × 12 + 7,000円 × 12 = 435,720円

基礎控除(特例適用):88万円

課税所得 = 160万円 – 435,720円 – 88万円 = 284,280円 → 28万円(千円未満切捨)

税額の計算

税金の種類 計算式 年額 月額
所得税 28万円 × 5% 14,000円 1,166円
住民税 28万円 × 10% + 5,000円 33,000円 2,750円

給与の手取り額(月額)

給与:200,000円

社会保険料:▲29,310円

所得税:▲1,166円

住民税:▲2,750円

給与の手取り = 166,774円

年金から天引きされるもの

介護保険料(月額)

65歳以上の方(第1号被保険者)の介護保険料は、市区町村ごとに異なり、所得段階に応じて決定されます。年金額が年額18万円以上の場合、年金から天引き(特別徴収)されます。

東京23区の介護保険料(参考)

基準額は年額7万円~9万円程度で、月額換算で約6,000円~7,500円程度です。所得に応じて、基準額の0.3倍~3.0倍の範囲で設定されます。

Aさんの場合、月額7,000円と仮定します。

年金の手取り額(月額)

年金:100,000円

介護保険料:▲7,000円

年金の手取り = 93,000円

Aさんの手取り月額

給与の手取り + 年金の手取り

166,774円 + 93,000円 = 259,774円

Aさんの手取り月額は、約26.0万円となります。

2025年税制改正の効果

改正前と改正後の比較

項目 改正前 改正後
基礎控除 48万円 88万円(特例適用)
課税所得 68万円 28万円
所得税(月額) 2,833円 1,166円
住民税(月額) 6,083円 2,750円
手取り月額 約25.4万円 約26.0万円

月額で約5,000円、年間で約60,000円の手取りが増えました

まとめ

65歳から年金を受け取りながら働く場合、給与と年金の両方から社会保険料や税金が天引きされます。Aさんのケースでは、月収20万円の給与と月額10万円の年金を合わせて、手取り額は約26.0万円となりました。

2025年の税制改正により、基礎控除の特例が導入され、給与所得者は大幅に税負担が軽減されます。Aさんの場合、基礎控除が88万円に増額されたことで、月額約5,000円、年間約60,000円の手取り増加となります。

在職老齢年金制度により、給与と年金の合計が一定額を超えると年金が減額される可能性がありますが、Aさんのケースでは基準額を下回るため、年金は満額支給されます。

注意事項
  • 本記事の計算では、その他の控除(配偶者控除、扶養控除、医療費控除など)は省略しています。
  • 介護保険料は居住する市区町村と所得段階により異なります。
  • 社会保険料率は年度により変更される可能性があります。
  • 基礎控除の特例は2025年および2026年のみの適用となります。
  • 実際の手取り額は、個々の状況により異なりますので、詳細は税理士や社会保険労務士にご相談ください。

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