不動産にかかる税金(特別控除と軽減税率)

居住用財産の3,000万円特別控除と軽減税率の特例について解説

不動産の譲渡(売却)には、譲渡所得税という税金がかかります。この税金は、不動産の所有期間や売却益によって計算方法が異なります。本記事では、不動産にかかる3000万円の特別控除と軽減税率について詳しく解説します。

居住用財産の3,000万円特別控除

個人が居住用財産(マイホーム)を譲渡した場合、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があります。この特例は、居住用財産の所有期間にかかわらず適用されますが、一定の要件を満たす必要があります。

(1) 内容

譲渡所得から3,000万円が控除されます。

(2) 居住用財産とは

自己の生活の拠点として利用している家屋を指します。これには、転勤などで一時的に居住できなくなった場合でも、配偶者などが引き続き居住しており、やむを得ない事情が解消された後には再居住が認められる場合も含まれます。

補足:店舗併用住宅などでは、居住用部分のみが特例の対象となります。ただし、居住用部分が家屋全体の90%以上を占める場合は、全体を居住用財産として扱います。

(3) 譲渡する居住用財産の要件

この特例を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
      
  • 現在、自己の居住の用に供している家屋の譲渡であること。
  • 現在の居住家屋とともに譲渡される敷地の譲渡であること。
  • 家屋に居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡であること。
  • 災害により滅失した居住用家屋の敷地の用に供されていた土地の譲渡。

居住しなくなってから空き家となっている場合や、貸付用や事業用に使用していたものでも適用されます。また、家屋を取り壊し土地のみを譲渡する場合も適用できます。ただし、取り壊し後1年以内に土地の譲渡契約を締結し、かつ、その間に貸付や事業用に使用していないことが条件です。

(4) 居住用財産の特別控除が受けられない場合

以下のケースでは、3,000万円の特別控除は適用されません。

  • 配偶者、直系尊属、生計を一にする親族等、特別な関係にある者への譲渡。
  • 新たに居住用財産を取得し、買換え等の特例の適用を受ける場合。
  • 前年または前々年に、3,000万円の特別控除や買換え等の特例の適用を受けている場合(3年に1回しか適用できません)。

(5) 共有の居住用財産を譲渡した場合

家屋とその敷地の両方を共有している居住用財産を同時に譲渡した場合、特別控除額は共有者1人につき最高3,000万円となります。

(6) 家屋の所有者と土地の所有者が異なる場合

この特例は家屋の所有者が、その家屋と土地を一緒に売却した場合に適用されます。しかし、家屋と土地の所有者が別々であっても、特定の要件を満たせば土地の所有者もこの特例の恩恵を受けられるます。

基本的な考え方

ここの特例のポイントは、家屋と土地を「一つの生活単位」として捉える点にあります。たとえ所有者が別でも、親族が一緒に暮らし、生活を共にしているのであれば、それは一体のマイホームであるとみなし、税金の負担を軽減しようという考え方です。

特例が適用されるための3つの要件

土地の所有者がこの特例を受けるためには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。

  • 1.家屋と土地を同時に売却すること。
  • 2.家屋の所有者と土地の所有者が親族であり、生計を一つにしていること。
  • 3.土地の所有者も、家屋の所有者と一緒にその家屋に住んでいること。

ここで重要なのが「生計を一にする」という言葉です。これは、必ずしも同居していることだけを指すわけではありません。 例えば、単身赴任や子供の進学などで別居していても、生活費や学費の送金が行われている場合は「生計を一にする」とみなされます。 しかし、この特例においては「一緒に住んでいること」も要件となっているため、同居していることが前提となります。

具体例で見てみましょう

この制度を理解するために、具体的な家族構成でシミュレーションしてみます。

  • 父: 土地の所有者
  • 息子: 家屋の所有者
  • 父と息子は同居しており、生活費などを共有する「生計を一にする」関係です。

この親子が、住んでいる家と土地を第三者に売却することにしました。

◆売却による利益(譲渡益)
  • 息子(家屋の所有者): 1,000万円の利益
  • 父(土地の所有者): 3,500万円の利益
◆控除の適用ステップ

この特例では、控除額はまず家屋の所有者から先に使うというルールがあります。

1. 息子(家屋)の計算

・家屋の利益:1,000万円

・3,000万円特別控除のうち、1,000万円分を息子が使います。

結果:息子の課税対象額は 0円 になります。
2. 父(土地)の計算

・3,000万円の控除枠のうち、息子が使った残りの 2,000万円 を父が使うことができます。

・土地の利益:3,500万円

・控除額:2,000万円

・計算:3,500万円 – 2,000万円 = 1,500万円

結果:父の課税対象額は 1,500万円 になります。

もしこの特例がなければ…

父は土地の利益である3,500万円全額に対して課税されることになります。この特例によって、課税対象額を大幅に圧縮できることが分かります。

注意点

重要なポイント

  • 控除額の上限: 家屋と土地の所有者を合わせて、控除額の上限は合計で3,000万円です。それぞれが3,000万円ずつ控除できるわけではありません。
  • 売却相手: この特例は、親子や夫婦など「特別な関係がある人」への売却には適用されません。あくまで第三者への売却が対象です。
  • 確定申告: 特例の適用を受けるためには、税金が発生しない場合でも、必ず翌年に確定申告を行う必要があります。

この制度は、家族の形態に配慮した非常に有利な特例ですが、要件が細かく定められています。実際に適用を検討される際は、税務署や税理士などの専門家にご相談されることをお勧めします。

居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の軽減税率の特例

居住用財産を譲渡した場合、一定の要件を満たすことで、3,000万円特別控除後の譲渡所得の金額のうち、6,000万円以下の部分について税率が軽減されます。

(1) 内容

軽減税率の特例が適用されると、税率が以下のように変わります。

3,000万円特別控除後の譲渡所得 所得税 住民税 合計
6,000万円以下の部分 10% (復興特別所得税を含む場合は10.21%) 4% 14% (14.21%)
6,000万円超の部分 15% (復興特別所得税を含む場合は15.315%) 5% 20% (20.315%)

(2) 特例の適用要件

この特例を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 譲渡した年の1月1日における所有期間が10年を超えていること。
  • 居住用財産の3,000万円特別控除 (3)の居住用財産に該当すること。


計算例

次の居住用財産を譲渡した場合、所得税(復興特別所得税含む)・住民税の合計額がいくらになるか計算してみましょう。

<譲渡した居住用財産の概要>

  • 所有期間: 15年
  • 譲渡価額: 9,000万円
  • 取得費: 不明
  • 譲渡費用: 300万円

計算:

概算取得費 = 9,000万円 × 5% = 450万円

課税長期譲渡所得金額 = 9,000万円 – (450万円 + 300万円) – 3,000万円 = 5,250万円

所得税・住民税の合計額 = 5,250万円 × 14.21% = 7,460,250円

まとめ

  • 不動産の譲渡所得は 分離課税 であり、所有期間が5年以下か超かで「短期」「長期」に区分され、税率が大きく変わります。
  • 譲渡所得は「総収入 -(取得費 + 譲渡費用)」で計算され、取得費には 減価償却概算取得費(5%) の選択も可能です。
  • 相続した不動産を相続税の申告期限から 3年以内に売却した場合 は、「相続税の取得費加算の特例」により、支払った相続税の一部を取得費に上乗せできます。
  • 加算額は「該当不動産の相続税評価額 ÷ 相続税課税価格 × 納付相続税額」で求めます(債務控除前の課税価格に注意)。
  • 譲渡のタイミングや各種特例の活用次第で、税負担を大幅に抑えることが可能です。

不動産の売却は高額な取引になるため、事前に税務的チェックを行い、専門家に相談しましょう。

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